[火焔地獄な酷夏]
一時の長雨の後、酷暑復活で、連日、都市化によるヒートアイランド現象とも相まって、耐えがたき暑さが、朝から朝まで、今だに続いている。皆様、残暑お見舞い申し上げます。このまま行くと、今夏も暑さの記録更新となりそうだが、欧州のTVニュースでもスペイン、ポルトガル、南仏、クロアチアにギリシャやトルコと地中海側の国々では、8月前半に40℃越えの記録的猛暑と手が付けられない森林火災に見舞われた様子を連日報道していた。北海道と同様、元々こんな暑さが想定されていない地域なので、クーラー無しが当たり前、南仏の古い病院での苦悩もレポートされていたが、まさにこれは地球規模の災害だ。
日中日向を歩くと目が眩みそうで、僅かな日陰を探して歩く有様に、自分でも滑稽に感じるが、そうせずにはおれない。それなのに年々、豊かな庭木の邸宅はいつの間にか、庭なし戸建てに細分化。大木のある家主は落ち葉問題などで管理しあぐねて強剪定か伐採。それでなくても危険木判定で切られる大木が増えて、街中の緑陰は減る一方。茂る緑の元では酷暑でもホッと一息、まさにオアシスなのに嘆かわしい事だ。緑のセンター前の階段を下りると、川があるせいもあるが、そこから空気がガラッと替わり、緑陰のありがたさを毎日実感する。
災害級の暑さに悩まされる現代、緑陰の有無はもはや命のレベルでの死活問題だ。落ち葉処理や剪定、水遣りなど、緑も生き物なので、手間とコストは係るのは当たり前、でもほとんどの人は、緑は空気同様あたりまえにあると思っていて意識の外でしかなく、問題の認識も低く二の次だ。緑は都市の環境機能として、もはや命を守る不可欠の資産、災害対策として重要視、国指導で意識改革を徹底、それなりの人員と設備等を盛り込んだ予算組で取り組んで頂きたいものだ。家を建てるなら木を植えて緑陰を作らないとダメだと、国レベルで、街中の緑陰創出とその保全、育成、管理の制度設計を検討、法制化を望みたい。
時折千里中央にも出向くが、ここは都市計画の段階から緑の空間がゆったりと配置されていて、ケヤキなども本来の樹形を保って、目にも体にも心地良い通りがある。維持管理には苦労がおありだろうと察するが、是非これを保っていただきたい。その千里の図書館で、興味深い本を見つけた。湧口 善之(ゆぐち よしゆき)著「都市林業で街づくり 公園・街路樹・学校林を活かす、循環させる」と言う、主に東京世田谷区で実践的に活動する都市林業家の活動を通して、都市におけるこれからの緑のあり方、管理におけるひとつの提案の書で、これが目から鱗の興味深い内容なのだ。
著者曰く、都市の緑を「負債」から「資産」と捉え、眺めるだけから活かす緑へ発想転換、合理性に合わない街の木も木材として公共施設などに活用、街の木を取り巻く文化や仕組みを変え、無理のない形で「都市林業」を成立させていく、「業」から「こと」へ。木材の他、木に触れ、木からの恵みも頂いて、多くの人と発見や体験も共に皆で楽しむ機会も作る。 その為の提案として、1街路樹の管理を林業のコンセプトで運営、2街の清掃工場をハブに、製材所も設け、リサイクル、バイオマス発電など効率的に有効利用、3都市の緑地を演習林と言う発想で、市民にも体験、木育教育の現場へ、と3つを発信している。
要するに、都市の緑を、市民参画で、守り、育てて、活用していくと言う事だろうと理解した。それって、エコーが目指しているコンセプトと共通する。20周年の折、大阪自然環境保全協会の機関誌「都市と自然」に投稿した「大都市近郊における里山由来の緑地の保全と活用」で述べた事と。都市林業と言う発想ではないが、里山としての生態的に機能をしなくなった都市近郊の緑地と言う意味で、上記の表現を使ったが、発想の角度は少し違へど、都市緑地の保全と利用の方向性は同じだと思う。参考に、皆さんも是非一読を。
詳しくはtoshiringyou.com https://www.toshiringyou.com ホームページ覗いて見て下さい。
基本的に朝TVはつけずラジオをただ流しているのだが、時より興味深い話に出会える。先日、スペインではクワガタが絶滅危惧種になっていて、その原因が、頻発する森林火災の拡大防止の為に、枯損木などを積極的に除去しているからだと言う。幼虫のエサとなる枯損木を一掃されては、それは大変な脅威だ。それでなくとも猛暑の影響で健全な生息が危ういと言うのに。研究者によると、変温動物であるクワガタなどの甲虫の生態的な適正温度は約10~30度位、35℃を越えると発育速度に影響して、繁殖にも支障を来す、40℃越えなど生息も危ういと言う、見解がある。人が引き起こした気候変動のしわ寄せがまた一つ、小さな生き物の生存を飲み込み、絶滅の縁へ追いやっていくのか。
スペイン語でクワガタの事をciervo volante シエルボ ボランデ「空飛ぶシカ」と言うらしい。オスの大あごをオスジカの角に見立てている。フランス語のcerf volantも、英語のstag beetleでも、同様の表現だ。学名はラテン語でLucanus cervus 種名は古代イタリアの地名Lucaniaにより、小種名cervusが雄ジカの意味で、やっぱり欧米は文化が同根なのだなと思う。余談だが、米口語でgo stagと言うと「女性を同伴しないで式典などに出る」と言う意味になるらしい。ちなみに、スペインの子達は、そもそも昆虫採集をやらないとの話で、これもちょっとびっくり。欧米ではセミの声もノイズでしかないので、欧米文化は根底から虫には興味が無いらしい。だとすると、ファーブルはよっぽど特異な人なのか?
欧州のクワガタはヨーロッパミヤマが普通、日本のミヤマクワガタに近縁だが大あごが大きい。
go stagの和訳でネットなどでは同伴者となっているが、語の本義を尊重して辞書の女性と記す。
2025年8月 17日 文責